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イギリスEU離脱~トルコリラは対ユーロで買え

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今回は、イギリス国民投票によるEU離脱派勝利の報を受けて、我らがトルコリラに与える影響について考察しようと思います。

結論としては、トルコ経済そのものに与える直接的な影響は軽微だと考えています。ただ、EU経済との結びつきが強いことがあって、間接的な影響を多々受けることでしょう。欧州連合のアクションと先進国の対応次第でしょうか。この点はまだ結果が出ていないので、材料の提供のみに留めたいと思います。

唯一言えることは、ユーロは間違いなく下落するということ。EUから丸々一国分のGDPが剥落しますし、EU崩壊と経済衰退のリスクが徐々に為替相場に織り込まれることでしょう。巻き添えを食ってトルコリラも下がるのでしょうが、どちらがより大きく下落するかと言えばユーロの方でしょう。

という訳で、トルコリラはユーロで買え。今回の記事は、EUR/TRYの売りシナリオで書いていこうと思います。

将来のリスクを織り込む為替相場

最初に、今回の大前提となるイギリスの国民投票について認識を合わせておきましょう。

今回の国民投票は、イギリス国民にEU脱退の意志を問うイベントでした。ただ、現段階ではイギリス国内の問題に留まり、EUへの正式通達は行われていません。さらに言えば、EUへの脱退宣言の後も離脱手続きに2年を要し、即刻脱退行われる訳でもありません。どれも9割9分、将来起こるだろう出来事ですが、まだ現実には顕在化していません。

それでも株や為替のチャートが乱高下するのは、将来のリスクを即座に織り込む値動きがあるためです。逆に言えば、為替相場は今ある材料(主にEUの経済後退懸念)しか織り込んでいないのです。変な話、キャメロン首相が辞任しないとか、次の首相がEUへの脱退宣言を固辞するとかいった材料が出てくれば、ユーロは却って買われる値動きを見せるでしょう。

現在のユーロの価値に織り込まれている材料は以下の通りと考えます。ニュースを読んでいて感じた、飽くまで個人的な憶測です。今回は、この前提の上で話を進めていきたいと思います。

既に織り込まれている材料

  • イギリスはEUから脱退する(99%)
  • キャメロン首相辞任(90%)
  • イギリスに続いて不満のある他の参加国(オランダ等)も追随する(80%程度)
  • EU崩壊のリスク(30%程度)
  • EU圏への企業投資抑制(80%程度)
  • 関税復活でイギリス~EU圏の輸出入衰退(99%)
  • イギリス経済衰退とEU圏への波及(99%)

これだけあれば、そりゃポンドも大暴落しますね。

相場に織り込まれていない材料

  • 国民やイギリス議会・次期首相の脱退賛否
  • 移民問題のEU/他先進国への波及
  • 先進国同士の協調策破綻(アンチグローバリゼーション)
  • 投資国イギリス衰退で波及する中国含む新興国への影響
  • EU(主にドイツ)が取るであろう混乱回避のアクション
  • G20が取るであろう混乱回避のアクション
  • ECBが取るであろうリセッション回避のアクション

おそらく週明けから、先進国各国がアクションを取ってきます。現時点で具体策が示されていないので、まだ相場に織り込まれていないと考えました。

トルコ経済への波及

前述のEUリスクに加えて、トルコ経済への波及を考えてみましょう。トルコ経済はイギリスとの結びつきは強くはないものの、ドイツをはじめとしたEU圏との結びつきが強いことがネックです。イギリスEU脱退の影響は、EU圏の衰退を通じて間接的・将来的に波及しそうです。

具体的には、EU企業衰退に伴う投資抑制です。自動車業界で言えば以前の記事で書いたように、フォルクスワーゲンやダイムラー(ドイツ)、フィアット(イタリア)、プジョー・ルノー(フランス)といった欧州企業が現地に進出しています。こうした欧州企業が減収減益となれば、必然的にトルコへの投資は減るものと考えます。投資抑制=将来の工業指数低下と考えてよいでしょう。

参考記事:トルコの自動車産業と黒字化の課題

輸出入の面でも、ドイツの経済衰退がネックになります。トルコにとって、ドイツは輸出で1位、輸入で2位の貿易相手です。EU盟主のドイツが経済的に後退するとなれば、トルコの輸出入にとってもあまり良い影響は与えないことでしょう。

もっとも、遠回しな書き方をしましたが、これらの影響は実に間接的に波及することでしょう。すぐに相場に織り込まれるかも微妙な所ですし、影響度の大きさにも疑問符が付いて回ります。個人的には、アメリカの経済政策の方がよっぽど支配的で、アメリカの緩和政策を100とすれば現時点では5とか10とかそういうレベルでしかないんじゃないかと考えています。

先進国通貨に対する見解

前述の通り、相場の材料を示してみました。まだ織り込まれていない材料があるとは言え、いずれにしても暫くはリスクオフが避けられないところでしょう。では、為替レートという面でどういった方針を持てばよいのか考えてみましょう。リスクオフで買われる先進国通貨に目を向けてみたいと思います。

リスクオフで買われる通貨は、ドル、円、スイスフランです。従来の秩序の中ではユーロが加わっていた訳ですが、今回は震源地ですので売られる側です。リスクオフの安全通貨は、現段階で以下の並び順で買われています。

日本円>米ドル>スイスフラン

今回の日本円は、キャリートレードの巻き戻しというよりも、安全通貨としての値動きが強そうです。幸い、日本はイギリスとの結びつき強くもないので、ユーロやスイスフランの代替通貨として買われたのだと考えます。

ドルが買われているのも同様の理由でしょう。「有事のドル買い」というほどでもありませんが、スイスフランが安全通貨の選択肢から消えてしまっています(ユーロに連動しやすい)。スイスフランの代わりに買われている感があります。ただ、既にドルは高値感があるためか、日本円ほど買われていない印象です。

トルコリラを買う場合、上記の通りドル・円が強いのでTRY/JPYとUSD/TRYの通貨ペアは選択肢から外れます。リスクオフの巻き戻しはあるでしょうが、それはもう少し後の話だと考えます。まだ、様子見したいと思います。

トルコリラ買うなら対ユーロで

結論です。トルコリラを買うなら対ユーロで。最初に結論から書いてみましたが、ここまでの内容を読んで頂ければ理由も分かって頂けると思います。個人的には、こうした理由で対ユーロ取り引きを再開するとは全く考えていませんでした。

トルコリラそのものに関しては、まだ楽観的な見方を保っています。むしろ、米国株は割高で日本株は停滞期。そこに来て欧州株の選択肢が消えたので、新興国投資の需要が戻ってきても良いかもしれません。まあ、この後に世界経済の後退にまで波及すると真逆の結果になりますので、明言は避けておきたいと思います。

具体的なトレードとしては、直接のEUR/TRYをショートするか、トルコリラ円を買ってのユーロ円売りだと思います。後者は円高ヘッジの応用編で、トルコリラ円しか取り扱いのない日本のFX会社でもユーロトルコリラを売買できる方法です。今の為替レートだと、トルコリラ円30,000通貨の買いに対して、ユーロ円9,000通貨の売りでしょうか。詳細は、以下の記事を参考にしてみてください。

参考記事:トルコリラをクロス通貨でリスクヘッジ

日銀の為替介入が復活するシナリオ

余談として、補足的な話もしておきましょう。もう少し先に来るであろうリスクオフ相場が後退するシナリオの話です。意外にも、トルコリラ円の買いには妙味があるんじゃないかと思います。日銀の為替介入復活です。

現時点で日本は為替介入をできません。少し前のG20会合で通貨安競争を避ける合意がなされたためです。ただ、今回のイギリス脱退問題を受けて、ここから対策会議が開かれます。ドイツを除く各国は、為替レートの安定化対策に十分な必要性を感じているはずです。応急処置として、各国ともに一時的な為替介入をOKとする合意がされるかも知れません。

日本は言わずもがなですが、自然なドル安を期待していたアメリカにとってもユーロ安は面白くないはずです。米国、日本がイニシアティブを取って、先の合意が翻す動きを見せることでしょう。幸いなことに、伊勢志摩サミットで安部首相の発言した「リーマンショック級の問題」が現実味を帯びています。当時は参加者全員「???」だったでしょうが、今になると理解を示すかも知れません。

長々と書きました。まあ、すべては「たられば」の仮説・シナリオでしかありません。ただ、リスクやシナリオを想定していれば、事態が起きても早急に対応することができますね。読者の方におかれましては「そんなこともあるかもね」と読んで頂ければ幸いです。尚、将来的に予想が的中した暁には管理人がドヤ顔しますので、ご了承の程よろしくお願いします。

※本記事は飽くまで管理人個人の主観を述べたものであり、将来的に渡る事実を約束するものではありません。FXは自己責任です。トレードにおいては自己の裁量で行ってください。

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