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地政学リスクと新興国通貨トルコリラの見通し~8月版

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この記事は2014年に掲載したものです。最新のFX予想とトルコ経済事情について気になる方は以下のページをどうぞ。

関連記事:トルコリラ管理人のFX予想~2018年の展望

8月に入り、外為相場は一旦の落ち着きを取り戻しています。足下では、ウクライナ問題に端を発する地政学リスク。先行きでは、米国金利の不透明感。とかく、新興国通貨は見通しの見えない状況が続いています。

そんな中、今月10日にトルコでは大統領選が行われました。結果は、現役の首相であったレジェプ=エルドアン氏の勝利。トルコ政府は、これまでの政策を強化する準備が整いました。しかし、そんなトルコ経済も、外部からは疑問の声が・・・。

上記の要因を受けて、新興国通貨トルコリラは果たして今後どうなるのでしょう?今日のブログでは、管理人なりに今後の外為市場を見通してみたいと思います。

地政学的リスクを受けてトルコリラ急落

最近のトルコリラ為替レートの値動きを見ていきましょう。以下は、トルコリラ対ドル(USD/TRY)のチャートです。

ウクライナ問題でトルコリラ急落ウクライナ問題でトルコリラ急落

チャートは上に行くほど、リラ売りです。ご覧の通り、8月の初旬からトルコリラは急落しています。

原因となったのは、緊迫するウクライナ情勢。発端となった首都キエフのデモから、ロシア政府による介入。そして、それに反対する欧米諸国のロシアへの制裁措置と事態が泥沼化しています。駄目押しとして、ウクライナ上空でマレーシア航空の旅客機が撃墜されたことで、市場の緊張の糸が切れました。

為替相場を始め、米国株式や国内株式などの取引市場は、一気にリスク回避の流れへ。投資家心理は弱気一色となりました。地政学リスクが強く意識され、リスク資産の投げ売りが行われました。

トルコリラは、リスク寄りの投資・投機資産です。上記の通り、リスク回避相場の中で、強く売られる展開となりました。

大統領選の結果に対する疑問の声

トルコに焦点を移すと、こちらもまた、相場に一波乱ありそうな展開となっています。理由は、エルドアン氏の大統領就任に対して、疑問の声が挙がっていることです。

今回の大統領選において、エルドアン元首相は従来の経済発展の貢献を買われて、大統領選に当選するという形になりました。しかし、これに対して疑問の声が挙がっています。例えば、格付け会社フィッチからは、「信用格付けの重しになる」との見方。以下は、ロイターの記事から。

[イスタンブール 11日 ロイター] – 大手格付け会社のフィッチ・レーティングスは11日、政治的なリスクがトルコの信用格付けの重しになるとの認識を示した。10日の大統領選で首相のエルドアン氏が当選したことを受けて、資本流入の減速や政治的な不透明感の高まりといった影響が予想される、と説明した。

フィッチは、エルドアン氏が大統領権限の拡大を目指す中、政治的な緊張が続くと指摘。エルドアン氏は中銀に利下げするよう圧力をかけており、中銀の「既に低い信頼性」が一段と損なわれる、と指摘した。

エルドアン大統領は、憲法改正を行い、大統領の権限を拡大することを望んでいます。これに対し、反体制派としては、これ以上のワンマン政治は堪らないという本音があるでしょう。トルコ経済の安定を脅かすとして、批判の声を上げています。今後は、大統領権限の拡大、そのための憲法改正が順調に進むかどうかという点が、政治的な話題の焦点となるでしょう。

現在、いくつかの関連ニュースが出ていますが、それらを見る限り、今回の大統領選の結果を終えても、将来の不透明を拭い切れていないように思います。

チャートで見る為替市場の展望

以上の経緯を踏まえて、今後のトルコリラの展望をチャートを見ながら見通していきましょう。結論から述べると、管理人の相場観は、「弱いリラ買い」です。緩やかなトルコリラ上昇トレンドを予想しています。

これまでの値動きをチャートで振り返ると、トルコリラの対ドルレート(USD/TRY)はレンジ相場を続けてきたことが分かります。

トルコリラ対ドルはレンジ相場トルコリラ対ドルはレンジ相場

市場の多くの参加者はサマーバケーションに入っています。レンジの値動きは短期資金にのみ作られていたのでしょう。長期筋不在の状況が推測できます。その証拠に、ガンマチャートで見ると、長期筋の値動きがほとんどないことが分かります。

トルコリラのガンマチャート長期筋トルコリラのガンマチャート長期筋

ガンマチャートの読み方については、以下の記事を参考にしてください。

参考記事:トルコリラのチャートの読み方

幸い、地政学リスクを意識したトルコリラ下落相場でも、長期筋に動きはありませんでした。また、エルドアン元首相の大統領選当選によって、政治的リスクも後退しました。これらの材料が消化されたことで、当面のリラ下落リスクの要因は出尽くしたものと考えます。

レンジ相場で逆張り戦略レンジ相場で逆張り戦略

再びレンジ相場を見返せば、短期筋のリラ買い戻しが予想できます。長期筋不在の状況で、短期筋が動かすことのできるレート幅が見えてきました。USD/TRY=2.06~2.17の1,100pipsです。投資家の戻る9月まで、しばらくこの値幅で相場は推移していくことでしょう。レンジ相場と見るなら、リラ買いの逆張り戦略が思いつきます。

地政学リスクは後退か?地政学リスクは後退か?

短期筋としては、地政学リスクでとりあえずは売り攻めしてはみたものの、現在、あいにくレンジブレイクできていませんでした。むしろ、リラ売りのポジション分布に偏っていて、近いうちに消化せねばなりません。また、「有事のドル買い」で、一旦は米ドル向かった資金が、ウクライナ問題の鎮静化に引き上げられるシナリオも考えられます。強い材料はありませんが、USD/TRYの為替レートはレンジの下限を目指しても良いのではないかと考えます。大きなトレンドは期待できないものの、当面はトルコリラの買い戻しの動きがあるものと予想します。

※本ブログは為替相場の情報提供を目的としたものであって、取引を強要するものではありません。FXは自己責任です。外為取引はご自身のリスク管理の元で行ってください。