2015年の現在、世界的な資源安と原油安が進んでいます。前者の原因は消費大国中国の成長減速。後者は米国シェールガス革命とアラブ諸国の価格操作放棄。世界では原油や石炭と言ったエネルギー資源の商品先物価格が下落の一途を辿っています。
そんな外部環境でも冴えないのがトルコ。天然資源もなく、2次産業を主産業とし、資源を消費するだけのはずが、いまひとつ恩恵を受けていません。ただ、原油安の恩恵は各国の経済に徐々にプラスの影響を与え始めています。今回は原油対トルコリラのチャートを見ながら、産業立国トルコが資源安のメリットを享受するシナリオを考えてみたいと思います。
資源価格下落の背景
はじめに本頁の大前提である資源・原油価格の下落について語りましょう。2013年頃でしょうか。米国でシェールガス革命が起きました。簡単に言うと、従来は採掘が困難であった質の悪いシェールガスを安価に取り出す技術が開発されたのです。
「安価に取り出す」という所がポイントです。シェールガスは質の悪いエネルギー資源ですから、あまり儲けの出る技術ではありません。エネルギー資源の需要が減れば採算割れとなり、採掘する理由もなくなってしまいます。実際、現在は多くの油井は採掘を止めているようです。
それでも原油価格が高騰すればシェールガスを掘ればいい訳です。シェールガス革命は石油の上限価格を決定付ける要因となった訳ですね。従来の原油価格はアラブ諸国の価格操作の元にありました。その価格決定権はもはや失われたと言って過言はないでしょう。もう原油安が止まりません。
石炭や鉄鋼価格も同様に下落しています。石炭、鉄鋼といえばオーストラリアですが、同国は長らく続く通貨高に疲弊しています。資源は売れるが自国通貨が強すぎて利益が出ない。豪中銀はさんざん利下げを続けて通貨レートを下げようと必死にやってきました。そこに来て主力の輸出相手=中国が景気減速の兆候を見せ始めた訳ですから、もう大変です。
トルコの産業構造
冒頭に書いた通り、原油、石炭と総じてエネルギー資源は価格下落の一途を辿っています。しかし、エネルギー安と言えば、本来は産業にプラスに働く好材料です。世界には資源価格低下の恩恵を受けるはずの国がいくつかあります。メキシコ、インド、韓国、そしてトルコが代表格です。
上記4国の共通点は何か。それは上記の記事を読んでみて下さい。いずれの国にも共通して言えることは、国外から資源を輸入し加工する2次産業を得意とすることです。メキシコ、トルコは自動車産業の代表格です。韓国は半導体が混ざっていて、インドはITに強いイメージがありますが。まあ、どれも2次産業を主産業とする点は共通しています。
トルコの場合、技術の高度化が国益を増やすための一つの方策でした。詳しくは以下の記事を読んでみて下さい。
国の利益を増やす方法は単純に言って2つ。一つは付加価値を高めること。もう一つは原価を下げることです。資源価格の下落は、いかなる製造業にとっても原価低減の絶好の機会であるはずです。
原油価格対トルコリラのチャート
趣を変えて、原油価格のチャートを見てみましょう。と言っても、見るのはメジャーな対ドルではなく、対トルコリラのチャートです。トルコ視点で原油価格の推移を見てみようというのです。このチャートは、原油価格対ドル(OIL/USD)×ドル対トルコリラ(USD/TRY)の掛け算で作ることができます。
チャートを見ての通り、トルコリラベースでも原油価格は高騰期の半値程度。確かにトルコにも原油安の影響が現れてもよい頃です。従来からトルコリラは米金融緩和の煽りを受けて、下落の一途を辿ってきました。原油価格が下がっても、通貨が弱くなってしまっては恩恵を受けることはできませんね。ただ通貨安以上に原油安のペースが早く進んでいるという認識で良さそうです。
確認していませんが、メキシコペソやインドルピー、韓国ウォンでも同様の事態になっていると考えます。これらの通貨を扱う各国も通貨安に悩んできました。それらの国でも徐々に資源価格の低下が経済にプラスに寄与を始める頃でしょう。
余談ですが、冒頭でお見せしたチャートの作り方は、以下の記事をご参考下さい。管理人はエクセルを駆使して作りました。元データはOANDA Japanはじめ、各社の先物チャートから抽出できるはずです。
外資流入で万事解決
以上の通り、世界的には資源安。しかし、エマージェンシー市場は未だ、その恩恵を受けていないことを書きました。しかし、実は同じように通貨安となりながらも、資源価格の低下で企業の利益が好転し始めた国があります。日本です。
日本と言えば、アベノミクス以降の金融緩和で円安の一途を辿ってきました。円安と言えば、円が弱くなる現象ですから国力を減じる政策です。しかしながら、それを上回る資源価格の下落でメーカーを中心とする原価低減が進んできました。原油を直接の原料として扱う化学メーカーで顕著です。ここ最近続いた企業決算を見ていて、つくづくそう思います。
トルコについても、そろそろ同様の逆転現象が起きるのではないかと思います。もっとも、やはりネックは通貨安ですね。通貨安故に資源が割高。それ故に通貨安というジレンマです。ここら辺は、米金融緩和が出口戦略に舵を切り始めたことで解決するでしょう。投機的資金の流入すれば、一気に通貨高に舵を切り始めます。
上記の記事に書いた通り、米量的金融緩和の終了で投機マネーが次に向かう先。それは、ご多分に漏れずエマージェンシー市場だと管理人は考えます。リーマンショックの際は、サブプライム債という歪んだリスク資産に投機が行われバブルが弾けました。ただ、トルコのようなエマージェンシー市場にも投機が行われた史実があります。それを踏まえての内容です。ご覧あれ。
これでトルコ経済の明るい未来が見えてきました。だんだんと点と点が繋がって線になってきましたね。あとは最近始まったイスラム国絡みの戦争とAKP与党の連立政権樹立の動き。これらのファクターもトルコ経済を好転させそうです。詳しい見通しについては、また今度記事にしてみたいと思います。