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2017年のトルコリラ相場感と見通し

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この記事は2017年に掲載したものです。最新のFX予想とトルコ経済事情について気になる方は以下のページをどうぞ。

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今回は2017年のトルコリラ相場見通しについて語りたいと思います。管理人の見方としては、2016年に既に大底を抜け、2017年は戻りを試す展開になると考えています。従来の下落局面で主要なリスク要因を消化し、またファンダメンタルズで重要な変化があったためです。

新興国投資の向け先として日本では根強い人気を誇るトルコ。こちらの見通しはいかがなものでしょうか。今回は、ファンダメンタルズの材料を交え、トルコリラの現在と未来を語りたいと思います。

2017年のトルコリラは

2017年のトルコリラは戻りを試す展開になると考えます。冒頭に書いた通りで、2016年の間に主要なリスク要因を為替レートに織り込んだためです。2016年11月には、リラのレートが急落する事態もありました。それ故に、現在の為替レートには従来から溜め込んでいたリスクが織り込まれ、灰汁(あく)抜けした状態にあると考えます。

世界経済に目を向けると、日米欧の金融緩和が終わりを告げつつあります。アメリカの量的金融緩和は既に縮小を始めた段階、欧州でもテーパリングの噂がちらほら出始めています。日本の黒田日銀総裁も任期が2018年までであることを考えると、今年は出口戦略を考え始めても良さそうな頃合いです。

金融緩和の縮小は、先進国の経済がリーマンショックからの景気回復を達成した事実を示しています。しかし、その影ではトルコを始めとするフロンティア市場は景気低迷を続けてきました。資本は流出し、為替レートはどの新興国でも下落の憂き目に逢いました。ただ経済的な望みとして、堅実なGDP成長率を維持し続けてきたことも事実です。先進国の緩和策が終わり、バランスシートの縮小が見えてきた現在、経済・市場の拡大余地を考えれば、投資マネーが次に向かう先は新興国群に他なりません。

そう考える理由のひとつがFRB利上げです。12月の現在、直近のFOMCでFRBは2017年に3回となる利上げペースを示しました。米国経済が好調であることを示す一方、米国市場はそれを織り込んでいて株・債権は既に割高な水準となっています。そうした中でも機関投資家はリスクテイクの姿勢を続けています。先進国市場は既に上値の余地がない一方、新興国市場は下値が見えた上にかなりのバリュエーションが効いています。当然ながら、新興国市場で株・債券が買われれば為替レートも上昇します。

実は、既に為替レートが戻し始めている新興国もあります。ロシアとブラジル、南アフリカです。ルーブル(RUB)、レアル(BRL)、ランド(ZAR)ともに既に大底を抜け20~30%以上(対ドル)戻しています。裏を返せば、これらの国は既に通貨暴落の憂き目に逢った国であるとも言えます。この点、我らがトルコはごく最近の11月にリラ(TRY)の大幅急落を経験したばかりです。それゆえ、トルコリラはここからが戻りを試す展開であると考える次第です。

重要なファンダメンタルズの変化

状況が好転してきていると書きました。基本的には悪い材料は既に織り込んでいて、さらに悪化するような材料は見当たらないと考えます。この点について、ファンダメンタルズの面から考えを述べていこうと思います。経済・政治・外交・治安の順に述べていきます。

インフレ・金融政策問題

新興国にとって一番の問題がインフレです。トルコも同様で、悪いことに直近のCPI(消費者物価指数)がインフレ傾向を示しています。原因は与党の圧力により、経済をコントロールする役目をトルコ中銀が果たせずにいたことです。ただ、直近の政策金利引き上げにより、事態が好転しつつあります。

トルコ中銀は2016年11月の金融会合で政策金利の引き上げ(7.75%⇒8.00%)を行ないました。実に2年振りの利上げです。これは2016年に就任したチェティンカヤ中銀総裁の独断により決めたことだと言われています。新総裁として、実に思い切った舵取りをしました。

さらに事態を好転させているのが、エルドアン大統領が通貨安に危機感を持ち始めたことです。国民にリラの保有を促したり、自身の資産をリラに変えたとアピールしたりと、実にそれと分かる明快な行動を取っています。チェティンカヤ中銀総裁も「物価安定の点から支持する」と大統領の行動を後押ししました。与党と中銀の意見が珍しく一致した点が評価に値すると考えます。

懸念される点は、未だエルドアン大統領が利下げを要求している点です。この点、中銀が今後も独立して物価維持判断をできるか否かがポイントとなるでしょう。為替レートへの直接介入にも言及しているので、こちらの方策に力を入れる算段であるかも知れません。

内需は順調・経常収支に疑問

意外かも知れませんが、これだけの通貨安や治安悪化がある中でも、内需の面では良い数字を残しています。例えば自動車。管理人は仕事柄、自動車の生産台数・消費をウォッチしています。どちらも昨年の実績を大幅に上回る水準で推移しています。トータルで見ても、景況感指数は100を上回ったままです(景況感指数は100未満で不景気・100以上で好景気)。

懸念される問題は、インフレと原油高が進んでいることでしょうか。インフレについては先に示した通りで、これは中銀の金融政策次第で決まります。問題は原油高で、これはトルコの経常収支を悪化させる可能性があります。トルコはエネルギーの純輸入国であるためです。

この点、2016年末に中東諸国で原油減産合意があったことを引き金にトルコリラの下落が加速しました。それゆえ、原油高は経常収支を悪化させる材料として織り込んではいるはずで、直近で大暴落ということはないでしょう。あまりにトルコ中銀が野放しにすると悪い材料になる。経常収支はそうした類のリスクであると考えます。

政治面はある意味安定

2016年はダウトオール首相の突然の辞任や、やはり突然のクーデターなど、政治の屋台骨を揺るがす事態が立て続けに起きました。政治的安定性の欠如=新興国投資にありがちなカントリーリスクが諸に表に出た年でした。

幸か不幸か、こうしたネガティブイベントの結果、トルコの政治情勢はエルドアン大統領の一極体制をさらに強める結果となりました。同大統領は憲法改正により大統領権限を強化。名実共にトルコの最高権力者となりました。賛否両論あるとは思いますが、こうした状況を管理人はトルコにとって良いことだと考えています。

余談ですが、政治的なスキャンダルは為替や株の長期トレンドに影響を与えないことが知られています。トルコに関しても、確かに政治問題でリラが急落する場面が何回かありました。しかし、全ての局面で為替レートが元の水準に戻っています。この点、エルドアン大統領のワンマン政治は世間で言われている程にはトレンドに影響を与えていないことは知っていてよいでしょう。

欧米・ロシアとの外交問題

2016年の一番の外交問題はロシアでした。戦闘機を撃墜したことをきっかけにシリア問題に対する両国のスタンスの違いが顕在化。一時期、ロシアがトルコに経済制裁を加えるまでに関係が悪化しました。この点に関して、現在の両国は非常に友好的な関係を示すまでに回復しています。

EUに対しては、シリア難民の防波堤として強いプレゼンスを発揮しています。ただ、難民受け入れに対する支援金交渉がこじれたり、EUへの加盟交渉が凍結されるなど、やや関係は悪化しています。とは言っても、EU加盟交渉は長年に渡って進展のない話ですので、そもそも期待すべき材料ではなかったと個人的には考えています。と言うよりも、イギリスのEU離脱でEU側は加盟交渉どころではないのではないでしょうか。

アメリカとの関係はオバマ政権の間に回復したと言われています。ただ、ご存知のように2017年にはトランプ大統領が就任します。次のシリア問題を絡めて、今後がまだ分からない問題です。

未消化リスクはシリア問題

最後に残る問題はシリア問題です。2016年の間は世界各国の思惑が交錯し、いまいち進展が見られませんでした。現在も、未だ収束への明確な道筋は見えていません。隣国トルコにとって、かなり長引いている問題です。

トランプ次期大統領の就任にあって、ひとつの焦点となるのがこのシリア問題です。同氏のスタンスとしては、NATOから距離を置く模様でマイナス材料です。ただ一方で、ロシアとアメリカの歩み寄りが見られるため、シリア問題に対する方策が一致すれば解決が早まる可能性があります。

トルコにとって、シリアの向こうにはイラク、イスラエルの中東諸国が存在しています。中東とのビジネスを今後模索していくためには、シリア問題の解決は避けては通れない話でしょう。当然、解決への進展があれば、トルコにとって大きなプラスの材料です。

2017年はどの通貨で買うか

以上の通り、2017年の見通しを管理人なりの解釈から述べてみました。個人的なスタンスは「買い」で、いくらかの投資妙味があると考えています。読者の方にもそう考えられている方が多いようで、最近では「トルコリラ×長期保有」のキーワードで訪れる方が増えています。実際、メジャーメディアでも新興国投資の妙味に関する記事がちらほら見えてきています。

トルコリラを保有する場合、通貨ペアの対になる対象が3つあります。日本円、ドル、ユーロです。どうにも皆さん、トルコリラ円での買いが多いようです。ただ、ドル円やユーロ円の売りを併用するとFXはもう少し面白くなると思います。円・ドル・ユーロのどれが2017年の最弱通貨となるか?という視点が生まれるためです。

トランプ発言で円高・ドル安もトランプ発言で円高・ドル安も

主要3通貨ペアの値動きに大きな影響を与える人物と言えば、この人でしょう。トランプ新大統領です。現在でこそ、ドル高・円安を許容しているものの、いつ何時、ドル安を主張し始めるか分かりません。個人的には、新大統領の発言如何でドル・ユーロ・円の力関係が変わってくると思います。

直近では円安の恩恵を受け、トルコリラ円が真っ先に上向きに転換しました。ただ、米国の政治動向次第ではドルを売るべき局面が来るかも知れません。無難な選択肢であれば、米国の影響を受けにくいユーロでしょうか。いずれにせよ、現在のドル高・円安のトレンドが一年を通じて変わらないとは考えにくいものがあります。

これらを踏まえると、トルコリラ円をベースにしながらも、所々でうまくドル円売り、ユーロ円売りのヘッジを掛けたいところです。幸いにも、これらの主要通貨はスプレッドも狭く、ヘッジのコストも安く済みます。スワップ運用を目論む分には構いません。ただ、経済動向を見ながらのメンテナンスはしっかりと行ってください。