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インフレ解消~利下げ観測に関する一考察

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先日、一件のニュースがトルコリラの大幅下落を引き起こしました。トルコ中銀バシュチュ総裁による政策金利引き下げの主張です。2014年の年初に大幅な利上げを実施したトルコリラですが、年末の現在になって、金利引き下げの見通しが強まってきました。

金利引き下げの主張の根拠となるのは、原油安によるインフレ率の低下です。エネルギー資源輸入国であるトルコは、世界的なエネルギー価格の低下によって輸入赤字の負担が減る見通しが立ちます。これまではエルドアン大統領の利下げ圧力にも動じなかったトルコ中銀ですが、上記の根拠で、結果的に利下げに同調する形となりつつあります。

果たして、トルコリラは利下げするのか?政策金利の動向は、確実にスワップポイントの金額に影響を及ぼします。ここからのFX相場の焦点です。今回は、12月25日のトルコ中銀金融会合を控えて、あらかじめ管理人なりの推察を展開してみようと思います。

バシュチュ総裁による利下げ主張

最初に、事の次第を振り返ってみましょう。トルコリラ利下げ観測の発端になったのは、トルコ中銀バシュチュ総裁による記者会見です。12月10日、ロイターに以下のニュースが流れました。

トルコ中銀総裁が利下げ余地示唆、「原油安でインフレ鈍化へ」

[イスタンブール/アンカラ 10日 ロイター] – トルコ中銀のバシュチュ総裁は10日、原油安で来年のインフレ率が中期的な目標の5%付近に低下する可能性があると発言、一段の利下げ余地があるとの見方を示唆した。

一読頂けると分かるように、トルコ中央銀行(CBRT)の総裁が政策金利の引き下げに言及したのです。

利下げの根拠とするのは、この所、話題になっている原油価格の下落です。トルコ中銀は、原油価格の下落により、インフレ率が低下するとの見通しを持っているようです。確かに、トルコはエネルギー資源の純輸入国であるので、単純に原油価格の下落が経済負担の減少につながります。特に、近年、トルコは重工業の発展に力を入れているので、エネルギー価格の低下が産業の発展に寄与します。

ただ、果たして理由はそれだけでしょうか。管理人は利下げの理由はそれだけではないと考えます。以下に、利下げのメリットを交えながら、考察を加えていきたいと考えます。

トルコリラは利下げするのか

トルコは2014年の年初に大幅な利上げを行いました。理由は、トルコの通貨リラの為替レートをコントロールするためです。ご存じの通り、トルコリラは米金融緩和の煽りを受けて、2013年初頭まで大幅なリラ安となっていました。

参考:量的金融緩和とトルコリラ安の関係

利上げの結果、トルコ中銀の思惑通り、トルコリラの暴落を抑えることはできました。しかし、良いことばかりではありません。政策金利の利上げは、経済成長の抑制、介入資金の増加など負の面も背負っています。トルコ中銀としても、兼ねてから政策金利を元の水準に戻すチャンスを伺っていたのでしょう。実際、利上げ後は、少しずつですが金利を引き下げています。

管理人の意見を先に言ってしまうと、近いうちにトルコは利下げを実施すると考えています。以下には、いくつか理由を述べながら、考察を加えていきたいと思います。

トルコ経済の成長再生策

利上げ当初から話題になった成長力とのトレードオフの問題です。利上げは通貨防衛にプラスに働きますが、一方で、国内経済の停滞を招きます。貸出金利が上昇し、企業の借り入れ、投資を阻害するためです。この点、先進国にキャッチアップすべき新興国としては、本来、好ましい政策ではありません。

トルコのエルドアン大統領は成長促進のために利下げを要求してきました。結果的には、バシュチュ中銀総裁の会見内容は、大統領の主張と一致しました。もっとも、中銀と与党は対立してきたので、与党の要求に応じた訳ではないでしょう。中銀独自で成長力を考慮した判断があったのではないかと考えます。

トルコ経済本来の成長力を取り戻すべく、利下げは時間の問題です。今回、バシュチュ総裁が記者会見で利下げ見通しを述べたことを踏まえると、カウントダウンが始まったと考えるべきでしょう。

米金融緩和の終了

アメリカの金融緩和が終了し、現在は利上げ時期を模索している段階です。米量的金融緩和といえば、新興国各国の通貨安を招いた元凶です。逆に言えば、米量的金融緩和の終了により、通貨安圧力が緩和されることが期待できます。

参考:量的金融緩和とトルコリラ安の関係

上記を鑑みれば、対ドルレートでのリラ高=インフレリスクの後退を見込むことができます。

ちなみに、米金利の上昇によるリラ高のメカニズムは、以前から本ブログで個人的解釈を述べています。以下の記事をご一読下さい。

参考:金利上昇で新興国投資をするファンドの事情

トルコリラ対ユーロの為替レート

欧州中銀が来年度から本格的に金融緩和をすることが期待されています。これにより、ユーロ安が期待できます。実際、現在でも緩やかにリラ高ユーロ安が進んでいます。

2014年のトルコリラの動き2014年のトルコリラの動き

トルコという国は、地理的にも貿易対象としても、ユーロ圏と深いつながりがあります。特に、工業製品の輸出先は欧州各国が主戦場です。思うに、トルコ中銀が主として考える為替レートの対象は、対ユーロ相場ではないでしょうか。

上記の通り、対ユーロでの通貨レートが回復してきたことを指して、インフレリスクの後退を予想しているのかもしれません。インフレリスクの後退となれば、利下げが妥当な結論です。

来年へ向けてのFX見通し

来年度は、米金利の利上げ、ECBによる量的金融緩和とトルコリラ買いに追い風が吹く期待が持てます。もっとも、目先のイベントとしては、12月25日のトルコ中銀金融会合が支配的な要素として控えています。ここで、トルコ中銀利下げ発表となれば、年明けからトルコリラ相場は波乱の展開が予想されます。

幸いというか、25日以降はほとんどの市場はクリスマスによる休場で、発表直後は大きな値動きはないと考えます。トレンドが発生するとすれば、年明け以降でしょう。海外ーは正月休暇という習慣がないので、年明け早々に動き始めます。

個人的には、そろそろトルコリラを買い始めてよいのかなと考えています。特に、金融緩和によりユーロ安が期待できるトルコリラ対ユーロが狙い目です。以下のように、週足チャートでも緩やかなリラ高トレンドを描いています。

トルコリラ利下げで押し目となるかトルコリラ利下げで押し目となるか

もっとも、先に述べた通り、近い将来、トルコ政策金利の利下げが控えています。実際問題、バシュチュ中銀総裁の発言とロシア危機懸念で、リラ高トレンドは一歩後退となりました。買うなら、利下げが実施された後でしょうか。ネガティブ材料の出尽くしの展開を狙います。

為替レートのトレンドというのは、おおよそ60ヶ月以内に収束すると言われています。トルコリラの下落が始まったのが2012年頃ですから、そろそろトレンドの転換を期待しても良い時期です。丁度、皆さんも正月休みに入るでしょう。腰を据えて、来年のトレードプランを練ってみてはいかがでしょうか。本ブログの記事が、読者の方のトレードに貢献できれば幸いです。

※本記事は外国為替取引の情報提供を目的としたものです。読者の方に、取引を強制するものではありません。FXは自己責任です。自己の判断でトレードを行ってください。

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