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1月の新興国市場と経済指標~管理人はこうみる

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FX相場の1月は重要な月です。世界各国の金融政策が出揃うためです。一年の為替市場の将来を見通すには、1月のイベントと市場の反応の関係を正しく認識することが重要です。今回は1月の経済指標と新興国通貨トルコリラの値動きを振り返り、管理人個人の見方で解釈を加えていきます。

2015年も1月が過ぎ、世界各国の金融政策が出揃いました。国内では日銀が現状維持、米国ではFRBが既定路線と、特に目立った動きがありませんでした。しかし、欧州でECBが予想以上の規模で金融緩和を開始。さらには、インドやトルコ、果てはロシアが早くも利下げ実施と、大方の予想を裏切る結果となりました。

果たして、上記のイベントを市場はどう捉え、どのような論理で動いたのでしょうか。新興国市場代表としてトルコリラ相場の反応をおさらいしながら、市場の反応とメカニズムを探っていきます。

1月のイベントと市場の反応

為替市場の見通しを立てるに当たり、まずは事実関係の確認をしましょう。1月にはエマージェンシー市場を含む、世界各国の金融政策が出揃いました。ここで各国の金融政策と市場の反応の関係を正しく捉えられないと、将来の見通しを誤ります。以下、あくまで管理人なりの見方で、市場の反応を解釈していきます。

為替市場の主立ったイベントは以下の通りでした。

  • 米雇用統計(1/9) ⇒ 強弱絡む内容。雇用者数増の賃金低下。
  • インド中銀(CBI)(1/15) ⇒ 利下げ。緩和路線に転換。さらに利下げを暗示。
  • スイス中銀(1/15) ⇒ スイスフランのユーロ連動制を廃止。
  • 日銀金融政策(1/20) ⇒ 追加緩和なし。現状維持。
  • トルコ中銀(TCMB)(1/20) ⇒ 利下げ。緩和路線に転換。さらに利下げを暗示。
  • 欧州中央銀行(ECB)(1/22) ⇒ 大規模金融緩和開始。
  • 米国連邦準備制度理事会(FRB)(1/29) ⇒ 既定路線。利上げ時期は明示せず。
  • ロシア中銀(1/30) ⇒ 大幅利下げ。経済回復を優先。

それぞれのイベントをチャートに書き込みながら、解釈を加えていきましょう。対象とする通貨は、エマージェンシー通貨代表のトルコリラです。市場の反応が分かりやすかったので、対ユーロペア(EURTRY)で見ていきます。

EURTRY1月の値動き(前半)EURTRY1月の値動き(前半)
米雇用統計に対する反応

発表前からドル買いユーロ売りの反応。トルコリラ対ユーロも、雇用統計を無視して動いていたように見える。

発表は強弱が交差する内容であったためか、市場の反応は限定的(売買の材料とされないという意味)。実は、過去のチャートを見返しても、1月の雇用統計はあまり売買の材料とされていない模様。トレンドが転換した形跡が見られない。

インド中銀の利下げに対する反応

サプライズの利下げ。しかも、市場はルピー買いで反応。利下げも市場の反応も予想外。従来とは異なるメカニズムが働き始めた。背景には、インド経済への成長期待があったと認識。

トルコリラには影響なし。しかし、利下げで同じエマージェンシー通貨が買われた事実は重要。

参考記事:利下げで新興国通貨買いのシナリオ

スイスフランのユーロ連動性廃止

スイスフランのユーロ連動性廃止に伴うEURCHFの上限撤廃。市場の混乱は、巷で知られている通り。一時的に大きな影響があったものの、エマージェンシー通貨や株式市場には、その後の影響なし。割愛。

日銀金融政策発表の反応

特になし。ドル円、トルコリラ円が沈静化していたので、ポジションが縮小していたと推測。発表内容にも特に目新しい点がなかったため、その後も市場の反応はなし。

EURTRY1月の値動き(前半)EURTRY1月の値動き(前半)
トルコ利下げの市場の反応

アナリスト予想を裏切り、サプライズの利下げ。こちらも市場はリラ買いで反応。インドと同じく経済成長への期待がある模様。対ユーロ、対円でも一時的ではあるが、リラ買いの反応。

尚、トルコリラ円は再び沈静化。ドル円の値動きが非常に鈍い。上値に売りオーダーが溜まっている様子。

ECB金融緩和開始に対する反応

大幅なユーロ売りリラ買い(エマージェンシー通貨買い)。金融緩和政策そのものは既に織り込まれていたものの、規模が市場の予想以上であったため、さらにユーロ売り加速。

リスク資産のエマージェンシー通貨が軒並み買われた点がポイント(トルコリラ、インドルピー、南アランド、メキシコペソ)。これで「欧州金融緩和=リスクオン」の公式が確定。今後も話題に上がる度に、リスクオンの材料とされると予想。

参考記事:ECB量的金融緩和を明言~新興国通貨買いの展望

EURTRY1月の値動き(後半)EURTRY1月の値動き(後半)
米FOMCに対する反応

イェレンFRB議長が声明発表も、目立った変更点なし。米国利上げの時期は年央(6月位か)との既定路線の見方が強まる。実際、遅れることはあっても、早まることはないだろう。尚、最近になって、利上げを織り込んで、日本の投資基幹もリスク資産の買い入れに舵を切り始めたニュースが出てきている。

参考記事:金利上昇で新興国投資をするファンドの事情

目立ったサプライズがなかったため、市場の反応に材料出尽くし感が漂う。新興国通貨は、ここで買いが一服。相場ニュースに対する情報リテラシーがあるトレーダーなら、ここで利益確定を考え始めたはず。

ロシア中銀利下げに対する反応

まさかのサプライズ利下げ。ルーブルは大幅下落。当然の反応。

問題はトルコリラ含む他のエマージェンシー通貨が釣られて下落したこと。ニュースでは「ルーブル利下げでエマージェンシー通貨の利下げ観測」との反応。

これは腑に落ちない。ロシアとトルコは関係ないし、トルコ中銀はすでに追加利下げを匂わせていた。トルコ中銀利下げ発表の時点で、追加利下げは折り込み済みであったはず。

この因果関係はフェイク。彼らの事情を知っていればヘッジファンドが利益確定するための建前とされたことに気付くはず(次回詳細記述の予定)。

まとめ

以上が管理人なりの経済指標、為替イベントに対する見方です。市場の反応を正確に捉え、参加者の思惑を汲み取ると、チャートの値動きを解釈しやすくなります。参加者の思惑を読むには、ニュースの表面には出てこないヘッジファンドの事情や習性を知っておくことも重要です。そういった知識は、数ある書籍やブログなどから役立つものを見つけて、コツコツ積み重ねていくしかないでしょう。

正しい知識を見つけて、初めて情報リテラシーが磨かれます。過去のニュースを振り返りながら、チャートを確認する作業も重要です。「知っていること」と「できること」は違います。過去の積み重ねがない人は、それ相応の努力をしなければなりません。

参考記事:ForexTester2(フォレックステスター)のFXバックテスト機能

基本的には、来月からトルコリラはポジション縮小、ボレティリティ低下の動きが出ると考えます。対ユーロでは、リラ買い決済の値動き。対ドルでは、リラ売りを買い戻す値動きでしょうか。対円は、米ドル対日本円の為替レートが絡んでくるので、単純には語れません。ドル円の上値に売りオーダーが溜まっている点が難しい所です。

詳しい為替相場の見通しは、次回のコラムで語りましょう。2月のトルコリラ相場の値動きを語ります。ポイントは、ヘッジファンドの決算月が近づいている点です。

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