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トルコ国会総選挙の結果~為替市場こう見る

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去る2015年6月7日に、トルコ国会の総選挙が行われました。FXの世界では、選挙と言えば為替レートが動く重要因子です。特にトルコの場合は、与党と中央銀行の主張が対立しているので、パワーバランスの変化がそのままトレンドの変化に繋がります。今回のケースでは、与党が過半数割れを起こし、市場に混乱が生じる結果となりました。

トルコ国会総選挙の結果を振り返りながら、トルコリラ為替レートへの影響を考えていきましょう。今後のファンダメンタルの焦点についても語ります。

トルコ国会総選挙の結果

選挙の結果を振り返ってみましょう。以下は、選挙結果を報じた為替ニュースからの転載です。

トルコ総選挙、与党が初の過半数割れ クルド系政党躍進

[アンカラ 7日 ロイター] – 7日に投開票されたトルコの総選挙では、保守系与党・公正発展党(AKP)の議席が、政権発足以来初めて過半数を割り込んだ。

エルドアン大統領は、今回の選挙でAKPが勝利を収め、同氏の権限強化を可能にする憲法改正の実現を目指していた。そのために、AKPは国会の3分の2議席を確保する必要があった。12年間続いた1党支配に終止符が打たれたことで、今後エルドアン大統領とダウトオール首相の影響力低下が予想される。

ご覧のように、トルコ政府与党であるAKPの議席数は大きくマイナス。過半数割れを起こし、与党の敗退色が濃い選挙結果となりました。

トルコと言えば、エルドアン大統領率いる与党の影響力が大変強い国家です。強烈なリーダーシップを発揮する点では、与党の勝利に終わった方が良かったのかも知れません。一方で、同大統領は暴君としても有名です。特に、中銀の通貨防衛施策(利上げ継続)を国会で批判するニュースが度々報じられます。通貨防衛という点では、与党の影響力が削がれた方がインフレ抑制=経済政策にはプラスに働くとの見方も浮上しています。

選挙結果を受けての市場の反応

前述のように、今回の選挙は通貨レートにプラスにもマイナスにも働く可能性があった選挙でした。ここは論より証拠ということで、市場の反応を見てみましょう。以下は、選挙が終わった週明け月曜日の為替チャートです。

トルコリラ総選挙後の為替チャートトルコリラ総選挙後の為替チャート

ご覧の通り、トルコリラ対ドルは大きく窓を開けて下落。トルコリラが売られる結果となりました。付け加えと、結果的にトルコリラは対ドル最安値を更新しています。当初の市場の反応は、リラ売りに傾いた訳です。

「窓開け」に関して少し解釈を付け加えましょう。窓を開けた連続性のないチャートというのは「市場に大きな混乱が生じている」ことを示します。この場合、まともなチャート分析は機能しません。機能するようになるのは、混乱が収まって市場に落ち着きが戻ってからです。落ち着きが戻れば、為替レートは本来の方向に進み始めます。

株式の世界では「窓は埋めるもの」という格言があります。しかし、為替チャートでは管理人の経験則で言うとあまり当てにならないようです。窓埋め狙いのポジション取りをしても、含み損の期間が長く、悶々とするケースが多々あります。こうしたTipsは、検証ツールで試行錯誤の経験を繰り返すと身につきます。

参考:ForexTester2(フォレックステスター)のFXバックテスト機能

トレンド転換視点は変わらず

ファンダメンタル分析の点では、今回の選挙結果は為替レートにはプラスにもマイナスにも働く要因です。一般には、与党が負ける選挙は、一国の政策実行力が失われた事態を示します。今回のケースがアメリカの選挙であったのなら、間違いなく母国通貨ドルは大きく売られたことでしょう。しかし、トルコの場合は特殊事情があると考えます。与党が通貨防衛に反対し続けていたため、与党の政策実行力が弱まったことが通貨安にプラスに働くと見ることもできるからです。

結局の所、今回のファンダメンタル要素は捉え方次第という見方をしています。それでは埒が明かないので、テクニカル分析に視点を合わてみたいと思います。分析の焦点は一つ。今回の選挙結果が、為替レートにどの程度織り込まれてきたかという点を考えます。もう一度、トルコリラの為替チャートを見てみましょう。

トルコリラは選挙前からリラ売りトルコリラは選挙前からリラ売り

ご覧の通り、選挙の前からトルコリラは売られ続けてきました。この値動きは、選挙結果でネガティブサプライズが起きることに対する懸念が原因でした。実は、与党の勝利・敗退は市場の焦点ではなく、先行きの「不透明感」に対するリスクを嫌う値動きであった訳です。相場の世界では、リスク=先行きの不透明感に対する不安を指します。

逆の見方をすれば、今回の選挙結果を受けて、不安材料が出尽くしたというのが管理人の意見です。結局の所、選挙を振り返っても、致命的に通貨安となるようなサプライズはありませんでした。トルコリラは現段階で無駄に売られている状況=狼狽売りが過ぎたと見ています。管理人のトルコリラに対する相場観は「買い」。市場の混乱が収まれば、次の材料に注目が集まり、リラは買い戻されるものと考えます。テクニカル的にもトレンド収束の兆しが出てきています。

選挙前からの建て玉をナンピンするのは得策ではありませんが、このタイミングで新規の買い仕込みならアリかなと考えます。厳密に言えば、もうひと売りされたところが買いのタイミングでしょう。狼狽売りの最終局面=SellingClimax(売りトレンドの最後のタイミングで大きく売られる現象)で底を拾うという考え方です。基本的に逆張りで厳しいトレードのですが、売りか買いかと問われればトルコリラは「買い」だと考えます。

今後の焦点は与党の立ち上がり期間

最後に、今後のシナリオについて語りたいと思います。トルコ市場で今後の焦点となるのは、与党継続の可否でしょう。選挙の結果を受けて、新規に与党が誕生します。次いで、新たに首相が生まれる訳です。ポイントとなるのは、いかに迅速に与党が形成されるかという点です。

過半数割れとは言え、十分な議席数を確保しているのでAKPが与党として継続するでしょう。与野党逆転ほどのイベントにはなりません。そうなると、新与党に問われる資質は実行力の有無となります。その力量を推し量る目安が、与党形成までの期間であるという訳です。首相選任までの期間が短いほど、結束が堅いという見立てができると考えます。

需給の面で見ると、今後、海外勢のサマーバケーション前の買いが控えています。いわゆる「ヘッジファンドの買い」ですね。彼らは裁定取引を使って、売りポジションと買いポジションの利率の差を利益に変える手法を好みます。この手の手法は、ポジションの保有期間が長いほど利益が増えるので、市場が早期に落ち着つほど、市場参入の機会が増えます。逆に、保有期間が短いとネガティブキャリー(調達コストでマイナス利益になる)になってしまいます。

裁定取引については、以下の記事を読んで頂ければイメージが湧くかと思います。

参考:トルコリラ両建てのスワップ裁定取引

市場の混乱が早く収束するほど、夏休み前のトルコリラ市場に参入する投資機関が増えるという寸法です。逆に、与党形成が遅れて再び市場に不透明感が漂うなら、買いの手が入らないので戻りは遅くなるでしょう。選挙を過ぎて、市場はいかに与党が速やかに首相を選任できるかという点に焦点を合わせて来ています。

※本記事は、管理人の主張を示すことを目的としており、読者の方々に取引行為を強制するものではありません。FXは自己責任です。本記事の真偽に拠り生じたいかなる損害についても、本サイトはその保証をするものではありません。

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