コラムとブログ PR

2016年上期のトルコリラ材料と見通し

本ブログは記事内に商品プロモーションを含む場合があります

この記事は2016年に掲載したものです。最新のFX予想とトルコ経済事情について気になる方は以下のページをどうぞ。

関連記事:トルコリラ管理人のFX予想~2018年の展望

毎年の恒例イベントとなった年始の為替相場見通しを語っていきたいと思います。2016年上期のトルコリラ見通しです。ファンダメンタル+チャートによるテクニカル分析の両面で見ていきたいと思います。

2016年のトレード材料としては、昨年末に米金融緩和が終了したことが大きいですね。従来はアメリカに投資資金が向かい、新興国からの資金が引き上げが続いていました。今年は、この流れが転換して新興国投資に回帰する見通しを持っています。チャイナリスクや資源安の懸念は依然残るものの、飽和した先進国市場を避けて利益を上げるためには、ヘッジファンドが新興国リスクを取らざるを得ない状況になると考えています。

ドルインデックスはもう少しのドル高相場でしょうか。対ユーロでは、金融緩和継続なるも難民問題で読み辛いところがあります。円安動向は黒田バズーカ次第でしょうか。追加緩和が決定すれば、見通しを付けやすくはなるでしょう。

トルコリラの2016年相場材料

はじめにトルコ経済そのものの見通しを語っていきましょう。ざっくり言って、主な材料は以下の通りです。

  • 米利上げにより新興国資金流出圧力は弱まる
  • 直近ではトルコ金利の追随利上げの期待
  • インフレ率は上昇中
  • 経済成長率(GDP)は向上中
  • 与党勝利の選挙通過で政治は安定

経済そのものはひどくはなく、むしろ経済は好転しつつあります。GDPは回復中で、政治的安定性もあり。消費と政治という面ならば、昨年までの悪い状況を抜け出したように思います。

一方の懸念材料は、インフレと戦争、商品先物の下落です。

  • CPI上昇中でインフレ進む
  • トルコ中央銀行は利上げを躊躇(政治圧力)
  • ISIS問題で地政学リスクが拡大
  • これに絡み対ロ外交が悪化(戦闘機撃墜を巡るトラブル)
  • 主に原油価格の下落に伴うリスク回避傾向

インフレ懸念は1月19日にある中銀会合次第でしょうか。同日の政策金利発表で利上げが実施されれば、目先のリスク解消となります。ただし、問題は利上げ派バシュチュ総裁の任期が4月までとなっていること。本人は続投の意欲を示していますが、政治圧力に負けて中銀総裁が変わるようだと、別の角度から先行き懸念が発生します。

トルコ中銀バシュチュ総裁トルコ中銀バシュチュ総裁

ISISとシリア問題について。これはコントロールできないリスクです。ロシア機撃墜のように突如発生するタイプで、予測しておくことが難しいハザードです。シリア難民問題を絡めて、欧州辺りからも火の粉が飛んできそうなところです。

原油価格の下落について。既にニュースで流れている通りです。新興国の多くが資源国であるためか、原油価格の下落に連動して新興国通貨売りが相次ぐ状況が続いています。本来、トルコは資源国ではないので、原油安はメリットこそあれデメリットはないはずなのですが、市場の心理が買いに行けない状況を作り出しています。

各通貨ペアに対する見方

相変わらず数多くのリスクと向き合うトルコリラですが、世界市場とヘッジファンドの需給面を鑑みるに、機関投資家は買わざるを得ないと言う見方を管理人はしています。

  • 先進国の債権市場は既に飽和状態
  • 先進国の株高も踊り場に到達
  • 2015年のヘッジファンドは利益が出ていない
  • ゆえに債権・株ではなく高リスク運用にシフトする必要に迫られる

さすがに2006年頃のキャリートレード真っ盛りという状況にはならないでしょう。ただ、先進国の景気が踊り場を迎えたことで、徐々に新興国への資金フローは回復していくものと見ています。

以下には、トルコリラと対になる先進国通貨の状況を見て、見通しを語っていきたいと思います。

ドル/トルコリラ

従来は米国の債権・株式に投資資金が集まっていたため、ドル高リラ安の一辺倒となっていました。しかし、2015年の年末にFRBが利上げを決定したことで最大のリスクが解消されました。

FRBジャネット=イェレン議長FRBジャネット=イェレン議長

利上げの進み方こそ緩やかであるものの、米金利の上昇に伴ってドルの借り入れ金利が上昇します。ドル調達コストの上昇により、従来のドル相場は転換点を迎えると考えています。

問題となるのは、チャイナリスクでしょうか。世界的なリスク回避傾向が高まれば安全通貨のドル・円が買われます。米国の好景気によるドル買いは、リスク選好の新興国投資フィーバーまでの道程を進めます。この点、良い材料なので歓迎すべきです。これと対比すると、リスク回避のドル買いは悪いドル高で、新興国投資への回帰を遅らせる要因です。

トルコリラ/円

日本株の上昇が停滞していることが懸念材料です。従来、外国人投資家が株を買い、為替ヘッジのために円売りを行っていました。しかし、チャイナショックと東芝問題(日本企業のガバナンスの問題)で日本株が忌避されています。

焦点となるのは、日銀の追加金融緩和が実施されるか否かです。現時点では黒田総裁の口先介入で場を凌いでいますが、実行力が示されないと海外投資家は納得して買いにはこないでしょう。

もっとも、管理人の見方は楽観的です。参院選挙のための国民の機嫌取り、憲法改正のための議席数確保、GPIFの損失穴埋め、そして市場からの期待。これらの材料が政府・日銀に緩和圧力をかけていると考えます。なんだかんだで、2月、3月辺りに追加緩和を発表するのではないでしょうか。当然、その場合は大きな円安で、相対的にリラ高となります。

ユーロ/トルコリラ

一番頭を悩ませる通貨がこちら。対ユーロ相場です。昨年末の欧州中央銀行の緩和策が期待外れに終わり、待ち受けるはシリアの難民問題。リスク回避のユーロ安傾向が、追加緩和の実施をなし崩し的にしています。材料としては、ユーロ高の圧力が強い状況と考えます。

しばらくはトルコリラ対ユーロの相場に好材料はなく、様子見といったところでしょうか。管理人は見通しを持てないでいます。早くて4月まではちょっと手が出せません。

もっとも、トルコリラ対ユーロの為替レートは見ておくべきでしょう。トルコと欧州は貿易関係で密接に繋がっています(特にドイツとの輸出入)。ユーロ高リラ安となれば、貿易赤字の悪化が進む材料となります。直近の貿易赤字が減っているだけに、ここでトレンド反転となってしまうと景気に悪影響を与えます。

チャートで見るトルコリラ

最後にチャートを見ていきましょう。見るのはドル/トルコリラの週足チャートです。大局的な観点から現在の状況を見てみましょう。現時点では、トルコリラの為替レートが対ドルで2番底を付けにいっています。

ドルトルコリラでトレンド反転の兆し

注目すべきはMACDのシグナルでしょうか。2015年にUSDTRY=3.073の天井を付けたときよりも下がってきています。いわゆる「ダイバージェンス」の転換サインです。意味合いとしては「2015年の底値よりも売りの圧力は小さい」とでも言い換えることができます。前回の天井であった為替レートと次のUSDTRY=3.073では意味合いが異なります。

管理人が楽観的でいるのはこのチャート分析によるものです。ここで底値を付ければトレンドは反転。ここまでさんざん悪い材料を並べてきましたが、裏を返せばひとつひとつリスクが解消されていけば、トルコリラ上昇の材料になります。米利上げという大きな売り圧力も解消されたので、トレンド反転のシナリオはあり得ると考えています。

とにもかくにも目先のチャートは2番底が焦点。ここを割っても、ヘッドアンドショルダー形成の次のシナリオが控えています。多少、底値を切り上げても、ダイバージェンスのサインは崩れそうにありません。管理人は、次のトルコリラ底値が大底になると期待しています。

長期投資家にとって、2016年は重要な年になりそうです。