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ギリシャ問題とマイナー通貨~管理人こう見る

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7月も中旬に掛かる今日この頃。欧州ではギリシャ問題、アジアでは中国株式市場暴落と、2015年7月の経済イベントは市場にリスクオフの冷や水を掛ける一大事となりました。しかし、一方でマイナー通貨のトルコリラはそうした事態でも堅調を持続。対ドル、対ユーロでの緩やかながらリラ上昇となりました。唯一、下落したのはリスクオフによる円高傾向の絡むトルコリラ円でしょうか。それでも、イベント一巡後は元の為替レートに復調を果たしています。

今回はギリシャ問題や機関投資家の需給に絡む値動きを振り返り、そのメカニズムを解き明かしていきたいと思います。

ギリシャ問題でリラ上昇の謎

はじめにギリシャ問題に絡むトルコリラの値動きを振り返ってみましょう。以下は、7月初旬に勃発したギリシャ問題前後のトルコリラ為替チャートです。対ドル、対ユーロでの値動きを示します。

USDTRYギリシャ懸念チャートUSDTRYギリシャ懸念チャート
EURTRYもギリシャ問題でも堅調EURTRYもギリシャ問題でも堅調

不思議なことに、ギリシャ問題というリスクオフ要因を抱えながらも、リスク通貨トルコリラは緩やかな上昇基調を堅持しています。

後付けの分析になりますが、その要因はドル、ユーロという2大メジャー通貨の下落であったのでしょう。リスクオフで売られたのはマイナー通貨ではなく、先進国通貨であったという訳です。その背景にあるのは、ここまでの株高で先進国通貨の買いポジションが溜まっていたことにあるのでしょう。次章でメカニズムを解説します。

市場の反応と通貨の相関性

米金融緩和が終了した現在でも、米国の株価指数は好調を維持しています。基本的に、リスクオン相場=株高を意味するくらい、世界市場は米国中心に動いています。そこから派生的に日本市場の株高、円安、ユーロ圏の経済指数向上という好景気という連鎖を起こしています。もっとも、世界経済が好調を維持する一方で、投資資金の多くが米国に集中し、買いポジションが積み上がっているという状況が大前提として存在します。

ギリシャのユーロ圏離脱問題・デフォルト懸念は、その好調な世界経済に「待った」をかけるトリガーとなったイベントでした。結果として生じた事態は米国株の下落です。上海株の下落も相まって、事態は日本を含むアジア市場にも波及しました。当事者のギリシャを抱えるユーロ圏が問題の渦中にあることは言わずもがなという所です。

マイナー通貨と先進国の関係を思い出してみましょう。高金利通貨として知られるマイナー通貨を擁する諸国は、日米欧の金融緩和策によって憂き目にあってきました。エマージェンシー市場の投資資金は引き上げられ、軒並み通貨安の憂き目にあって来たのです。先進国の為替レートが上がれば、マイナー通貨のレートは下がる。長らく、このメカニズムが続いていました。

直近のトルコリラが緩やかな上昇を続けてきたのは、上記のメカニズムに巻き戻しの動きがあったためです。簡単な話、ドル・ユーロという先進国の通貨が売られて、相対的に影響のなかったトルコリラが漁夫の利を得たというところでしょうか。幸いにも、トルコがEUに未加盟であることもプラスの要因として働きました。

唯一の例外は、トルコリラ円です。トルコリラ円は円安・円高の影響を受けます。日本円は安全通貨ですから、リスクオフの状況では毎度のことながら円が買われ円高傾向を示します。今回のギリシャ問題でも、リスクオフによって円高となりました。結果、円の価値が上昇し、対円のトルコリラ為替レートは下落したという寸法です。

余談~7月はドル高のアノマリー

ここまでの論理展開が全て後付けになってしまった理由について、少し釈明をしましょう。実は、例年7月というのはドルが買われる傾向があります。背景にあるのは、米株市場のサマーラリーです。米株は夏休み前の機関投資家によって買い込まれる傾向があるのです。この点、管理人が用意していた記事はドル高リラ安の内容だったので、ギリシャ問題がなければそちらをアップデートする予定でした。目算が狂った形です。

余談ついでに、サマーラリーについて補足しましょう。例年、7月から9月にかけて、ウォール街を中心とした米国の機関投資家はサマーバケーションを迎えます。このサマーバケーションを前に、ファンドマネージャーが株式を買い込む傾向があるのです。ファンドの四半期決算を終えた直後ということも相まって、夏休み前のこの時期は一時的な米株買いとなるのが通例です。これがサマーラリーが生じる背景です。

前述した通り、米株買いとなれば同時に米ドル買いとなります。為替市場に当てはめると、サマーラリー=ドル高という図式が成り立つ訳です。今年は日本株でもサマーラリーが噂されていて、円安が進むんじゃないかとの憶測も飛び交っています。実際問題、アベノミクス相場の買い手は海外投資家ですから、7月日本株上昇のシナリオには個人的にも同意しています。

トルコリラそのものがサマーラリーの対象になるかは、個人的にはまだ懐疑的に受け止めています。もっとも、リスク資産の一つであるので、サマーラリーでリラ買いのシナリオがあってもおかしくはないでしょう。ただ、今回のギリシャデフォルト懸念で怖いのは、本来のサマーラリーの意義=米株高の揺り戻しです。ドル買いの需要ポテンシャルがさぞかし残っていることでしょう。次回は、このサマーラリーに絡む夏相場の値動きを検討してみたいと思います。

後日加筆

この記事の大筋を書きあげた翌日にトルコ南部でテロによる爆破事件が起きました。次の記事では、この事件の見方と問題も加えてシナリオを描いてみようと思います。

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