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経常収支とトルコリラの相関関係

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先日、トルコの経常収支が発表されました。発表後にトルコリラは微安となる反応を示しました。ただ、長期目線で見ると、現在のトルコリラは経常収支の推移に対して随分と安い位置にあるように思います。経常収支が改善しているのにトルコリラは安いままであるからです。

今回はデータ分析が中心です。トルコの経常収支と通貨リラの相互関係を追っていきたいと思います。

トルコ経常収支の推移

最初にトルコ経常収支の推移をデータで見ていきましょう。以下のグラフはトルコの経常収支を2004年から2016年(最新)までプロットしたデータです。経常収支の単位は10億ドルです。

トルコ経常収支実績値の推移

見ての通り、トルコは万年赤字国となっています。ただ、これはトルコに限ったことではなく、新興国全般で同様の傾向があります。むしろ先進国であってもアメリカみたいな連続赤字の国はありますから、必ずしも多くの国が黒字である訳ではありません。

問題となるのは、経常収支の赤字が急激に進んだ場合です。トルコの場合、2011年から2014年まで大きく赤字が膨らみました。当然ながら、トルコリラの暴落が続いたのもこの時期からです。基本的に、通貨レートは国の経常収支に比例する傾向があります。

経常収支と財政収支

トルコの場合に少し救いがある点は、経常収支は赤字であっても財政収支は黒字が続いていることです。データを見てみましょう。以下は、トルコ財政収支の推移をグラフで示したものです。

トルコ財政収支の推移

財政収支が黒字なのに経常収支が赤字になるのはどういうことかというと、必要なインフラ投資や国債の利子支払いが経済を圧迫しているということです。特にトルコの場合、海外からの資本で経済成長を賄っています。結果、トルコリラのレートが悪化した昨今は、外貨建ての利子の支払いがキツくなっているはずです。

尚、経常収支と財政収支の関係式は以下の通りです。

経常収支=民間純貯蓄+財政収支

「民間純貯蓄」という金額が投資の増減や利子の支払いを表す項目です。この項目の赤字が大きいと経常収支も赤字になりがちです。ただ、新興国の場合は将来へのインフラ投資が大きいので、基本的に赤字になる項目です。

収支悪化は底抜けの状況

経常収支の見通しに話を移しましょう。実を言うと、トルコ経常収支の見通しは、具体的な金額がIMFから既に発表されています。以下は、IMF発表のデータを加えたグラフです。

トルコ経常収支とIMF予想

数値データはIMFのサイトから

ご覧の通り、IMFの試算ではトルコ経常収支は既に底抜けの状態。2017年からは緩やかに推移していくと予想されています。この点は、トルコリラに投資する方としては少しホッとする状況ではないでしょうか。

もっとも、今後も経常収支の継続的な改善は、投資家やアナリストの求める重要項目であることは既定路線です。そのためには輸出産業を育て、観光産業を振興し、トルコリラのレートも改善しなければなりません。シリア問題が収束しつつある今、政府の対応が求められる場面です。

織り込まれていない収支改善

最後にちょっとした気付きの話を少々。前項では経常収支の改善が底抜けの状態にあると書きました。既に経常収支の金額は上向きなのですが、実はトルコリラの為替レートに織り込まれていません。

この点は、経常収支とトルコリラの推移を比較すると分かります。以下のグラフでは、トルコ経常収支とトルコリラの対ドルレートを重ねて表示してみました。

経常収支とトルコリラの相関関係

冒頭にも書きましたが、経常収支と為替レートは基本的に比例の関係にあります。その相互関係を裏打ちするかのように、経常収支とトルコリラレートは乖離・収束を繰り返してきました。この点、現在の為替レートはまだリバウンドしていません。そう、経常収支の改善がトルコリラの為替レートに織り込まれていないのです。

経常収支とトルコリラの乖離・収束

そのような訳で、2017年のトルコリラはお買い得。こんなロジックはいかがでしょうか。

参考記事:トルコリラの長期保有戦略

※本記事は現在及び将来に渡る事実を保証するものではありません。筆者の主観が多分に含まれた内容となります。FXは自己責任です。売買の判断はご自身の裁量にて行ってください。